「鉛筆にも、まだやれることがある...」
誰も観たことのない「鉛筆画」を目指す、想像力の冒険
壁のシミや天井の模様、床の汚れなど、芸術作品のように鑑賞する対象ではなく、本来は何の意味もないものでも、眺めていると何かの形や風景に見えてくるという経験をしたことはありませんか。
夜道で樹木の影が不気味な魔物に見えたり、形を変える空の雲にさまざまな空想を重ねたり…。どうやら、ひとの眼やココロには、たとえとらえどころのない状態の物からでも、「何か」を見つけ出そうとする 不思議な性質があるように思われます。
その性質を全面的に信頼し、鉛筆の粉で無作為に汚した紙の様子を、それが何に見えるかじっと観察することから描いてゆく技法(あるいは発想法)を『紙の無意識』と名付けました。
それはいわゆる抽象絵画でもなく、自分本位の想像の世界を描いたものでもなく、まるで紙の中に元々埋まっていたイメージを、鉛筆で発掘して行くような描き方です。
なお、紙を汚すのに水彩鉛筆によるシミを利用する場合には、『水の無意識』と区別して呼んでいます。いずれも、描き手の僕自身が思いも寄らなかった世界を、紙に教えられながら描いて行く技法なのです。
- - Empty Colours (AKIRA FUJITA) 2007年 - -